「え?話したっけ?うん、いるよ」

 答えながら、お兄ちゃんの事を思い出す。

 会いたいよ……。



「ふーん」

 雅は急にあたしの身体に回した手に力をこめてきた。

「なんなのよ」

「小町、お兄ちゃんのこと好きみたいだ」

 雅の言葉にドキンとした。

「毎晩寝言でもしきりに呼んでるよ」

「そうなの?」

 自分では覚えていないけど……

 そうか、きっとお兄ちゃんは夢の中に出てきてくれているんだ。

 あたしは表情が緩んでいることを自覚していた。

 だって、嬉しいもん。

 夢の中でいいから逢いたい。



「なんか、嫌だ……」

 雅は不機嫌そうだった。

「何言ってるのよ、兄妹なんだから好きに決まってるでしょ」

 あたしは焦って必死にそう言った。



 そうだよ、あたしとお兄ちゃんは兄妹なんだから。

 どうにもなりっこないんだ。



 あたしがどんな風に想ったとしても。