雅にキスされたときは、びっくりしてしまった。

 だけど、その後は別に普通だった。

 はじめはドキドキしていたあたしだったけど、雅はまるで気にした様子ではなかった。

 本当に何の意味もなくて、おまじないだったんだと思う。
 
 世の中には変わったおまじないがあるらしい。

 きっとお金持ちの世界だけに通用するんだよ。

 うんうん、絶対そう。



 そう思っちゃったほうが、精神衛生上いいに決まってる!……よね?

 ああ、やっぱり学校の選択を間違えたかな。





 悶々と悩む日が続いたけど、徐々に忙しくなってそのうちそれ所じゃなくなっていった。



 あたしは少しずつ学校の生活にも慣れてきていた。

 本格的にはじまった授業はさすがにハイレベル難しかったけど、ついていけないほどではない。

 でも、予習・復習しないと難しいから、毎日寮にかえってしっかり勉強した。

 成績を落としたら、特待を消されてしまうかもしれない。



 そして、相変わらずコイツに付きまとわれる日々だった。

「こっまち!愛してるよ~」

 毎日毎日毎日、べたべたべたべた虎に付きまとわれている。

 本当にウザイけど、コイツが東雲虎之助である以上、突っぱねたりできない。

 いつ堪忍袋の緒が切れて、殴り飛ばしてしまうか気が気じゃなかった。

 しかも、雅と虎はめちゃくちゃ仲が悪い。

 巻き込まれるあたしのストレスゲージはうなぎのぼり。ただいま急上昇中だ。

 あたしの今までの常識を覆すことが次々と起こるんだから、たまんない。