絶対にみちゃダメ!

「もう伊鈴の取り巻きに目をつけられちゃったのねえ。馬鹿虎のヤツが無神経なせいよ」

 雅のぼやきに思わず納得してしまう。

 虎のヤツには無神経って言葉がぴったりだ。





 雅にテラスに誘われたけど、もうへとへとだったあたしは、部屋に帰ることにした。

 この東雲学院は寮があった。

 別に入っても入らなくてもいいんだけど、あたしのような奨学特待生は入ることも条件になっていた。

 雅もついて戻ってくる。

 実は雅も特待生だった。



 雅の話だと、家柄も入学の条件を満たしていたんだけど、わざわざ特待生試験を受けて入学したんだそうだ。

「無料のほうがいいでしょう?それに、家柄で入ったと思われたら悔しいし」

 不思議がったあたしに、曇りのない笑顔で雅は答えてくれた。

 ちょっと変わり者なのかも。美人なのに。

 お金持ちの考えていることって、よくわからない。





 そんなわけで、雅とあたしは同室だった。

 校舎から一本低木に囲まれた小道を抜けると、そこに石造りの立派な寮があった。

 別に男子寮もある。

 大きさはたいしたことはない。

 ここに入るのは特待生ぐらいだからだ。

 だから、各学年に数人しかいない。

 そのわりには随分立派ではあった。

 個室じゃないのが意外なぐらいだ。