あたしは思いっきり眉間に縦ジワを寄せていた。

 不機嫌の原因は一つじゃない。



 一つはコイツ、黒髪短髪の俺様キング。

「こまちー。なんで帰っちゃったんだよー。俺、部屋に夜這いに行ったのに~」

 なーんで夜這いにくるって分かってて、待ち構えていなきゃいけないのよ、と思ったけど口には出来ない。

「ごめんねー。ちょっと慣れない雰囲気に疲れちゃって」

 あたしは引きつり笑いを浮かべながら、教室の木の長椅子に座ってくる虎からじりじり逃げた。




 でも、逆側には涼しい顔をした雅が座っていた。

 もちろん女の子の制服姿だけど。

 これがまた憎ったらしいほど似合うから余計に腹が立つ。

 詰めてくれればいいのに、漬物石みたいにどっしり椅子に座っているから、身体を動かすと雅に密着しちゃう。




 本当だったら虎なんか一発殴って黙らせたいところなんだけど、虎を挟んで向こう側にお姫様・伊鈴が座っていた。

 本日もお抱え美容師が手間ヒマかけた、くりんくりんの縦ロールがツヤツヤ光っていた。

 時々、お嬢様とは思えないほどの鋭い目線を長いまつげ越しに投げてくる。




 そんなんだから、殴ることも叩くこともできやしない。

 ただでさえクラスで浮いてるあたし。

 表立って伊鈴と対立したりしたら、この学園で生き残っていかれないよ。


 あー、ストレスたまる!