深呼吸をして、インターホンに手を伸ばす。




「はい」




彼の声がするのに、胸が締め付けられて喋れない。



数秒の沈黙後、インターホンは切れた。



でもその瞬間、暖かい何かに包まれる気分になった。



この沈黙が
私の今の心境にはピッタリだった。




「はぁ....はぁ...」




近づいてる。


確実に近づいてきてる。



頭の中に自然に入ってきた、彼の家の構造。



あの日、ただ駆け抜けたリビング。


痣を確認した玄関。



そして、
重々しく開けたドア。



でも今日は違う。
今日からは違う。




「.......ッ!!」




わざとらしい表情が、すべてを物語っていた。



私もワザとらしくしてみたかったけど、それよりも今は....




「うわッ!!」




彼に飛び込みたかった。

彼に抱きつきたかった。