編集長は顔を歪ませて、担当者を見つめる。
「誰にだ」
「物語のモデルとなった女性だと...」
「あいつはまた、報道陣を寄せるつもりか」
重いため息をついて、編集長は外を見つめる。
“物語のモデル”
彼の言っていた通り、女なら喜んでやるのね。
一体いくら、その女性に払ったの?
私が考えたって、無駄で意味なんか無いのに。
私はガムシャラに小説にペンを入れる。
「違う、違う、
主人公に感情が入りきってない...」
新人作家からのFAXも忘れて、ひたすら小説を読み込む。
すると、同僚からそのFAXと本を渡された。
「眉間にシワ寄り過ぎよ。
これ、あんたの担当作家から」
「あ、ありがとう
.....この本は何?」
本をなぞりながら、同僚はニコリと微笑んだ。
「人気作家の新作。
さっきまで軽く読んだんだけど、超大作」

