「いや、なんでもない。」

「なに?気になるよ。」

千広くんに少し近づいてそう言った。

「花音ってさ...俺のこと、好き?」

「......はい?」

時が止まったように感じた。

気まずそうに目をそらしている千広くんと、わけがわからない表情をしているであろう私。

「どうなの。」

「ぇっ!?いや、ないよ!!ないない!!」

全力で否定した。

"好き"

そんな言葉は、今初めて意識した言葉だから。

ありえないよ。

「そっか。」

気のせいかな。

心なしか、千広くんの表情が少し暗くなった気がする。

"なんでそんなこと聞くの?"

本当は、そう聞きたかった。

けど、聞けなかった。

千広くんの言葉が、胸にずっと残っていた。

本音を言えば、聞くのがなんとなく怖かった。