「どうでした?」
「加護は無事に……馴染んだ。もう盗られることはないよ」
人通りの全くない道、二人は聞き取れないほど小さな声で会話をしていた。
誰にも、それこそ佐倉にさえ聞かれてはいけない会話。
「では、お仕事開始ですわね」
「……ちゃんと植えれたし」
「春になったら驚かれるかしら。植えた覚えのない桜が咲くのだから」
「大丈夫……咲耶姫と衣通姫は綺麗」
「そうですわね。……監視が露見したらわたくしたちは切られてしまいますわ」
「木花咲耶姫様のご意向。……仕方がない」
二人のため息は夜空に吸い込まれていく。
木花咲耶姫は奥方と双子の子どもたちに加護を与えた神。
咲耶姫の願いを了承するかわりに、加護を破綻させないようにと二人に言いつけていた。
有り体に言えば監視だ。
加護があるのに不幸になれば木花咲耶姫の沽券に関わるから。