「……っ!!」

「どうしたんだい?悪い夢でも見たか」

落ち着け。

此処はさくらの園。

隣には初。

もたれている幹は江戸彼岸。

つまり、佐倉 花王の本体だ。

「……はあ。嫌な夢を見た」

わしゃわしゃと髪を乱す彼は佐倉 花王。

月見の会で閑散としているさくらの園を護るために化身の姿で結界の番をしていたのだが。

いつの間にか寝てしまっていたようだ。

「どんな夢だったんだい?」

「…………言いたくない」

「ん?……ああ」

初も思い当たるものがあったのか、それ以上の追及はない。

「あいつがいなくなってから何年だ?」

「……さあ、十年は前だけどね」

「そうだな、吉野が逝ったのがそれくらいだ」