「寒緋、久しぶりに明かりを灯しては頂けませんか?」
「そうだな。昔はよくやったものだが」
すっと立ち上がった花魁姿。
平行に広げた扇子――望月を夕城邸へと向けて。
――「夢桜変則《陽炎》」
望月に息を吹きかけると、扇子からシャボン玉のような光の玉が飛び出した。
曖昧な光の集まり。
幾多の色とりどりな光はゆらゆらと宙を漂っている。
「ほら、行きな」
寒緋が望月を振って風を起こせばその風に乗って光は庭へ広がる。
幻想的な光が夕城邸の庭を包み、暖かな光を放っている。
決して主張しすぎることのない光は月明かりを邪魔しない。
ただゆらゆらと漂うだけ。

