「何事もなく終わって良かった。祝いの席で騒ぎを起こすのは御法度だろう」
「本当に良かった。木花咲耶姫様も奥方と子どもたちを気に入ったようですし。……咲耶姫は?」
「咲耶姫は奥方たちの護りをしてますわ。加護が馴染むまではいろいろなものに狙われやすいですから」
この月見の会で狼藉を働くのは至難の業ではあるが、護りは多い方がいい。
「そうか。……おっと」
酒を取ろうとした手が間違って杯を倒してしまった。
夜も更けて月明かりのみとなった光のせい。
夕城邸の光も広い庭の全てを照らすことはできない。
皆無意識のうちに光がある方へと流れているようだ。
これではあまりにも風情がない。

