てなわけで。

「衣通姫、チラシの……域を越えた気がする」

月夜を背景に書道家顔負けの字がA4の紙を所狭しと踊り、小さく時刻と場所が書かれただけのチラシが完成した。

けれども満月と下に咲き誇る桜が見事すぎて見るものを圧倒するほどの迫力がある。

「そこまで……やらなくても」

「これくらいやらなくては気が収まりませんわ。わたくしの特技を適当に決められたのですから」

えっと、すみません。

「でも、桜はいいアイデア……」

作者の意向は空気のようにスルー。

今回は二人に私の声が聞こえていないので仕方ありません。

「涼しくなってきたから冬や寒緋や四季や十月が咲いているわ。どうせみんな行くのだから一仕事してもらわないと」

「うん。……お願いしてくるね」

咲耶姫はさっと立ち上がって仲間に相談しに行った。

衣通姫と一緒に頼むより咲耶姫一人の方が頼み事は格段に成功率が増す。

天然の可愛さが佐倉の心を掴むらしい。

衣通姫はその間にチラシを刷ることができるため、一石二鳥だ。