「……お月見がしたい」

「また唐突ですわね」

さくらの園の中、佐倉 咲耶姫と佐倉 衣通姫は二人で仲良くお茶をしていたのだが。

「だって……中秋の名月」

「まぁ、いいでしょう。お団子、すすき、みんなは御神酒も飲むでしょうから準備をしないとね」

衣通姫の言葉に咲耶姫はきょとんと首を傾げたあとに急いで首を振った。

「ちがう。ちがうの。衣通姫……お月見、奥方の屋敷でやりたい」

「もしかして」

「お祝い……したいから。みんな、みんな呼んで」

ふわふわほんわか天然な咲耶姫は変なところで頑固だ。

ずっと一緒の衣通姫は嫌というほどそれに付き合ってきた。

それというのも、

「だから、手伝って……衣通姫」

可愛い可愛い咲耶姫にほわっと微笑まれると断れないから。