「……わかっているとは思いますが、彼女が話していた生徒はほとんどが卒業しています。今の学園は彼女が遊んでいた学園ではないのですよ」

彼女が枯れ、吉野がその後任に着いたのはもう十年も前になる。

その時代からいるのは年齢不詳の生徒たちと一握りの教師たちだけ。

雰囲気もずいぶん違うだろう。

「知ってるよ、おばぁから"こうとうぶ"は三年で卒業、しちゃうからお姉ちゃんの友達はいないんだって。
でも、でもね、吉野はお姉ちゃんが、おばぁが、花王が好きなところに行ってみたいの!」

いやいやと首を振って吉野は言葉を紡ぐ。

けれども御衣黄の顔はいまだ渋いまま。

学園には吉野の障害となるものが沢山あるのだ。

魔の力を振るうものなどから放たれる負の力は吉野の身体を容易に蝕む。

普段は気にならないほど存在感が薄い不良たちも心配だ。