「木花咲耶姫様に……お願いしてきた。……大変だった」

「最終的には木花咲耶姫様を祀っている神社の結界修復で了承して頂きましたわ」

「おい、お前らわざとだろう」

寒緋がわからないようにわざとはぐらかしている。

「うふふ、《神降ろし》ですわ。それに、」

「木花咲耶姫様から直接……《言祝ぎ》を預かってる」

「なっ!?」

随分期待させたのだから、下らないことだったらぶん殴ってやろうと考えていた寒緋は一瞬でその考えを破棄した。

だって、神直々の言葉だ。

それも力のある。

「……とっても苦労したけど、喜んでもらえるかな……と思って」

咲耶姫と衣通姫が誇らしく胸を張っているのもわかるというものだ。

有り得ないことを起こしたのだから。

「木花咲耶姫は人に関わらないタイプの神じゃないか」

唖然と呟いた言葉は二人の笑みを深めさせた。

「木花咲耶姫様……わたしを気に入ってくれてる」

「もちろん、それに見合う仕事はしてきましたけれど。特にお気に入りの神社は大変でしたわ」

いたずらっぽく輝く瞳が仕事だけで了承されていないことを物語っているものの、当事者が語りたくないことは聞かない方が身のためだ。