一方、咲耶姫はその名を『木花咲耶姫』という神から取っている。

その縁で咲耶姫は木花咲耶姫にも仕える変わり種の佐倉となった。

八重桜の特徴である十二単のような着物を羽織り、少しウェーブのかかった髪を二つに結んでいる。

髪留めは自身の花。

性格はおっとりとしている、と言えば聞こえは良いがその実、真性の天然だった。

二人の神に仕えて浮き世離れしたのだろうと佐倉内では囁かれているようだ。


「まぁ、いい。咲耶と衣通が訪ねて来たんだ。何かあるんだろう?」

「……寒緋、名前は正しく言って……ほしい。わたしは咲耶姫」

「わたくしは衣通姫ですわ」