「寒緋……今日は《管理者》だったんだね……」

円を描くように咲き誇る桜の中心にいた佐倉 寒緋は、微動だにしていない。

実際寒緋は息もしていなかった。

目も開かず木のようにただ、佇んでいただけ。

その寒緋が声をかけられたことによって動く。

「咲耶姫の接触を確認。管理者の任を一時解除、結界を保持します」

確かに寒緋の口から出ている声。

しかし、明らかに寒緋とは違う声だ。

一切無駄な動きがないそれは不気味とも言えるだろう。

「咲耶、声をかけるな」

そう言ってまぶたを開いた寒緋はいつもの寒緋だった。