仕事を終え、佐倉 御衣黄はさくらの園へと帰ってきていた。

我が家と言えば語弊がある気もするが、化身として動くことが多い彼らにとっては家にも似た安心感がある。

それに何より。

「おかえりなさい、御衣黄」

ぺこりとお辞儀をする幼女。

この幼女が待っててくれる。

「ただいま、吉野。今日は体調大丈夫なんですか?」

御衣黄は話しやすいように腰を屈める。

目の前でにぱっと笑う幼女は佐倉 吉野。

染井吉野の化身でヒトの姿を取れるものの中では一番若い。

けれど、それは今だけではない。

いつも吉野だけが若い姿で過ごし、逝く。

人間の都合で作られたために身体が弱いからだ。