案内も何もないのでとりあえず目についたベンチに座ってみた。

周りには彼と同じようにベンチに座る中学生が惚けていた。

普通、オープンスクールとは受付をして退屈な話を聞いて在校生に連れられて学校を回るものだ。

こんな風に投げ出されてしまったことなどない。

ふと思いついてパンフレットをめくるが、この状況を回避できそうなものはなかった。

資料を何枚か取り除いてやっと見つけたオープンスクールの説明書。

説明書といっても【ご自由に学園内を見学して下さい】と一言書いてあるだけだ。

後は無駄に迷路じみている校舎の見取り図と迷子用の生徒がいる場所が記されているだけ。

全く状況が変化しない。

それでも動かなければ遠いこの土地にまでやってきた意味がない。

萎えそうになる心に鞭打って彼は動き出したのだった。