人間の魂は見たことがある。

幽霊、と呼ばれるものはその類だろう。

馴染み深いものだ。

冬の知らぬところで桜が幽霊となっている可能性が無いわけではない。

限りなく零に近いと思ってはいるが。

だから冬は怖れている。

実は桜は、佐倉は魂など無いのではないかと。

所詮、植物だ。

本来は動くなど夢のまた夢。

それを曲げて動いている己は紛い物かもしれない。


冬はその考えを誰にも話していない。

初や花王にさえも。

肯定されるのが怖かった。

同時に否定されるのも怖かった。

己は桜としての自身が好ましい。

輪廻転生とやらで他のものに生まれ変わるのは嫌だ。