数ある木々の中から先代を見つけ出して手紙を添える。
それからしばらく吉野は枯れた木を見つめていたが、気が済んだのかその場を離れた。
「そういえばさ、なんで冬のところにあるの?」
「《墓場》?」
「うん。領域から外れたところに作れば良かったんじゃないの?」
「そうねぇ……。吉野はこんな噂を知っているかしら
――『美しい桜の下には死体が埋まっている』」
ざあっと桜たちがざわめく音がした。
抗議と、否定の意志。
「埋まってないよぅ。吉野の下にも、みんなの下にも」
「もちろん、そんな話は嘘よ。でもね噂には力がある」
「力?」
「言葉は全て力を持つわ。それがどんなに信憑性のないものでもね」
冬は横たわる先代たちを見つめていた。
実際確認したことはないけれど、積み重なる木々の下の方では己を土としたものがいるはずだ。
遠い遠い昔、次世代に思いを馳せた先代たちが。

