桜が舞う。

桜の花びらが枝を離れ、風と踊る。

濃緋紅色から桜色、白、黄色や緑の色とりどりの花びらたちが右へ左へ気まぐれに。

円を描くように生えている桜の花びらは皆一様に中心へと向かう。

気まぐれに、ひらひらと舞いながら中心へ導かれる。

上空から見たら柔らかい桜色の絹のように見えるだろうか。


焦がれる花びらたちが決して届くことのない円の中心。

はらはらと花びらが落ち、絨毯を形作る聖域にそれは佇んでいた。

圧倒的な威圧感。

長い年月に裏付けされた存在感。

そして、そこから放たれる力。

跪きたくなるような聖なる気。

全ての桜の王。


――江戸彼岸、神木の佐倉 花王がそこにいた。