最後に。
これはお姉ちゃん以外誰も読まないでしょう。
だから、わたしたちがずっと秘密にしていたことを書いておこうと思います。
お姉ちゃん、ごめんなさい。
お姉ちゃんがご病気になったとき苦しくて苦しくて仕方がないのに生きることを諦めれなかったのは、わたしたちのせいだよね。
生きなきゃ、生きなきゃって、すっごく辛そうなのに繰り返してた。
それをみんなは幼い子供が死ぬことを怖がっているのだと思っていた。
でも、わたしたちにはわかっていた。
お姉ちゃんはみんなに比べればずぅっと幼かった。
底抜けに明るくて元気で幼い子供の典型的な例だった。
そうみんなは思ってた。
でも、わたしたちは知っていた。
お姉ちゃんは確かに歳ではみんなに届かなかったけど、幼い子供じゃなかった。
いろんな事を見てきて、いろんな事を考えてた。
それを知っているのはわたしたち《染井吉野》だけ。
お姉ちゃんの眷属だけが知っていた。
わたしたちには全てが理解できた。
――お姉ちゃんはわかっていた。
自分がどんな状態なのかを。
――お姉ちゃんは知っていた。
みんなが自分を可愛がっていたことを。
――お姉ちゃんは理解していた。
自分が死ぬという意味を。

