これが本当に最後だ。

彼女が光の中に吸い込まれたら龍也はお母さんの思い出を全て失ってしまうだろう。

いいの?龍也、本当にいいの?

彼女が龍也を振り返り何かを呟くと頬を一筋の涙が伝った。

胸が鷲掴みにされるような切なさと苦しさが襲ってくる。これは…僕の感情じゃない。

怒りと憎しみと哀しみ、そして相反する愛しさと、苦しいほどに求める感情。


これは龍也が捨てようとしている感情の全てだ…。


龍也は苦しげに頭を振ると噛締めた唇から声にならない声を絞り出した。


―― 母さん…い…やだっ…!


龍也は僕の手を離し、その手をお母さんを求め求めるように伸ばした。