どんなに苦しい記憶でも失ってしまったら思い出にも出来なくなる。

君の中には大きな穴が開いて何処までも寂しさがついてくるだろう。

気付いて…。

記憶を封印してしまうより、自分で時間をかけて思い出にする事が本当の意味でお母さんを忘れる事になるんだ。

能力(ちから)で胸の奥深くに押し込めたって、何時か封印が解けるときが来る。

今逃げてしまったら、その時一人で乗り越える勇気が君にはあるだろうか。

その時までに君を支えて共に乗り越えてくれる人と出逢えるように…と祈るしか僕には出来ない。

光が眩しさを増し、視界が白一色に染まる中、桜の花びらが舞う幻影が浮かび上がった。

綺麗な女性が光の中に佇んでいる。その女性には見覚えがあった。

龍也のお母さんの最後の記憶だと確信する。