一体誰に似たんだろう。

俺の父さんは普通の黒髪にこげ茶色の目をしている。

俺の知っている限りの身内もみんな同じような色だ。

なのに何故俺だけなんだ?


顔も見たことの無い俺の母さんに似たんだろうか。


ずっと不思議に思っていた。どうして俺は他の人と違うんだろう…と。

そして聞いてみたいと思っていた。どうして俺には母さんがいないのか…と。


物心ついたとき、俺の母さんはいなかった。


幼い記憶の隅っこに霞みがかかったように覚えているのは紅茶の香り。

優しい微笑みは逆光で見えなくて、でもその雰囲気で俺に満面の笑みで微笑みかけてくれている。

『響…もうすぐ紅茶が入るわよ。美味しいクッキーを焼いたのよ』

夢の中のその人はいつだってそう言って俺に手を差し伸べる。


だけど…その手を取ろうとした途端

まるで幻のようにその人は消えてしまうんだ。