俺には母さんの記憶が無い。

写真1枚さえも無いのだから、死んだ後もずっと見守ってくれる暁のお母さんが羨ましいと思う。

俺だったら…佐々木の為に母さんとの絆を捨てられないと思う。

それでも暁は晴れ晴れとした笑顔で迷い無く頷いた。

「うん、いいんだ。天使がそう望んでいるから。」

「天使が?でも会えなくなるんだろう?」

「心配してくれてありがとう、響。でも僕はお母さんの代わりに大切なものを手に入れるからいいんだ。」

暁は何もかも分かって納得している。

だからそれ以上言える事なんて俺には何も無かった。