「…龍也がその思い出を無くしたほうが幸せなら僕は止めないよ。」

暁は悲しげに瞳を閉じるとそう言って言葉を続けた。

「封印してあげるよ。お母さんの事。
幸せだった記憶も、楽しかった事も。
いつか本当に龍也の心を癒せる運命の人に出逢うまで…。」

「な…に…?」

「忘れさせてあげる。つらい事を全部。
その代わり楽しかった事も優しい記憶も全部無くなってしまうよ?
お母さんがどんな人だったか、どんな風に笑ったかどんな声だったかも忘れてしまうかもしれない。
それでも…龍也はいいの?」

「お前にそんなことが出来るのか?」

「僕の力を全部使えば出来る。
でも…元に戻す事は出来ないよ。僕はもうこの能力(ちから)を失うから…。」