傷つき血を噴き出している佐々木の心の痛みが大気を震わせて俺に伝わってくる。

向かい合い見詰め合う二人の表情はまったく正反対だった。

手負いの獣のように牙をむき暁を睨みつける佐々木と、それを全て受け止めるように微笑む暁。

佐々木が暁を振り切るように駆け出したその時 ――

―― 二人を包み込むように風が舞い上がるのがわかった。


刹那、直感した。天使が龍也の行く手を阻んだのだと。

この大気が、緑が、命を育む全てのものが共鳴して暁を助けているのが分かる。

暁の身体からは目には見えないが確かに凄い力と光が溢れ出しているのを感じた。