佐々木は今自分を支えるので精一杯なんだ。

あいつを放っておく事なんて出来ない。

すぐに後を追って走り出そうとした俺の手を暁が掴んで制した。

――! 

追うなって言うのか?

あいつを傷つけて追い詰めたクセに?

思わず怒りが込み上げて暁を睨みつける。

「暁、おめぇ何考えているんだよ?
あいつを傷つけてこのままにしておくつもりか?」

「違う、待っていたんだ。
彼が手足を出して息を継ぐときをね。」

そう言ってニヤリと笑った暁に、罠にかかった獲物を見てほくそえんでいるイメージが脳裏に浮んだ。

ゾクリと冷たいものが背中を駆け抜ける。

俺が信じられないものを見た気分で呆然としていると、おかしくてたまらないと言う風にクスクスと笑ってウィンクをしてみせた。

「これでいいんだよ。さあ、あいつを迎えに行こうか。」

ニッコリと微笑んだその笑顔はもういつもの暁のものに戻っていた。

先ほどの表情が幻だったかのような天使の微笑み。だが俺はその裏に隠れた計算高い悪魔を垣間見た気がした。

俺を救った『親友』は天使か。それとも悪魔か。

俺はとんでもないヤツと親友になってしまったのでは無いかと

この時ほんの少しだけ後悔した。