僕は入学式の時の彼を覚えている。

とても仲の良さそうなお父さんとお母さんに両手を引かれて歩いていて、お母さんが生きていたら僕もあんな風に歩けたのかなって、少しセンチメンタルに思った記憶があるからだ。

だけど、それからすぐに1週間ほど学校を休んだ後、久しぶりに登校した彼は、あの時とは別人のように暗い表情で、自分の殻に引きこもっていた。


誰とも話さない。

誰も見ようとしない。

何も感じようとしない。


その姿が余りにも哀しくて、何とかしてあげたいと思った。