入学式の日、俺は母さんと手を繋いで校門を出た。

「明日から龍也も一人でここまで通うのよ?
歩けるのかしら…。お母さん心配なんだけど。」

「心配しなくていいよ。俺なら大丈夫。
それより母さんのほうが心配だよ。」

「え?あたし?」

「母さん入学式でず~~~~っと泣いてただろ?」

「え?泣いてたって龍也気付いてたの?すご~~い。」

「…わかるって、そんなに目も鼻も真っ赤だったら。
シッカリしてよ。母さんがそんなんだから父さんが心配するんだぞ?」

「は~い。やっぱり龍也はシッカリしてるわねぇ。」

「まったく。あんまり父さんを心配させんなよ。
…会社サボって母さんの様子を見に来たらどうす…。あ!」

「ん?なぁに龍也。どうし…。あ!翔!!」

俺の視線の先に父さんを見つけた母さんは、パアッと微笑むと父さんへと満面の笑顔で駆け寄っていく。

まったく、仲が良いのはいいけれど、俺を引きずるのはやめてくれよ母さん。

父さんのことになると、どうしてこう周りが目に入らなくなるんだよ。
子供じゃあるまいし。

…って、俺に子供扱いされてどうするんだよ。