「そろそろ手…離せよ。」

俺の心も伝わっている気がして照れくさくて、ワザとぶっきらぼうに振り払おうとしたが安原はぐっと力を入れて離そうとしなかった。

「いやだね。手を離したらおまえはまた一人になろうとするだろう?
さっきみたいに苦しい顔してうなされるのは見たくねぇし手を繋いでいてやるからもう少し眠れよ。」

「ばっ…ほっとけよ。」

「バカ…。お前みたいな頭でっかちで無茶をする友達を放っておけるわけ無いだろう?」

「うるさい。俺にかまうな!」

ぶっきらぼうに突き放したが、あいつは気付いていたのだろうか。

その手の温もりをもう少し感じていたいと思った事を。

あいつの言葉に胸の痛みが僅かに和らいだ気がした事を。

決して手を離そうとしない安原から顔を背けて、照れ隠しに頭から布団を被った俺は、すぐに睡魔に襲われた。

「おやすみ龍也。」

安原の声が溶けていく意識の中で、眠りの呪文のように心地良く響いた。