先生が行った後、郁奈が話し始めた。

「わ、私も……帰ります、ね。お祭りで…会おう、………筒路くん」

「あ、あぁ。また後で」

郁奈が神社の階段を駆けおりていく。


俺も帰るかな、と思い神社を出ようとした。

カシャン


後ろの方で音がした。


だが後ろには祠しかない。

鈴が風で揺れたのだろう。

一歩踏み出した時足になにか堅いものが当たった。

「…ん?」

俺はしゃがんでそれを手にとる。

「時計?」


それはまるで不思議な国のアリスのウサギが持っていそうな懐中時計だった。







「おまたせっ!」

「え。あ…雪?」

気がつくと目の前に雪がいた。

「なに?寝ぼけてたの?」

「な、んで……」

「よう、唯鹿、雪」

「やほー」

「良樹…?」

空を見てみると、すっかり暗かった。

「夜……」

「そういえば、真と郁奈ちゃん遅いねぇ…」

「俺が家を出てきたとき、真はもう出たって言ってたぜ?」

「唯鹿?」

「あ。いや、なんでもない。俺も見なかった。」

雪は腕を組み、右手の人差し指を顎に当てた。

「うーん…わっかんないなぁ…二人とも一体どこに…」

「神社じゃねぇのか?最初はそこに待ち合わせだっただろ?」

「そうだねー行ってみるか!!」

「ふ、二人とも何言ってるの!?ここがじん、じゃ………」


信じられなかった。

ついさっきまで、神社ないたのに。


ついさっきまで、まだ明るかったのに。

「……学校?」

「?キャラ立てを意識するようにしたのー?」

「何言ってんだ?」

「…な、なんでもないよ。ごめん。神社に行こう。」



手に握りしめている時計が、夢ではないと物語っていた。