俺は瑠衣と海に来ている。

みんなとはよく来るが、二人きりは初めてだ。

とりあえず、ビーチボールをしようと考えた。

「唯鹿さん、およげるんですねぇ…」

「んー、まぁ、な」

「私、泳げないんですよ」

瑠衣は恥ずかしそうな顔をして、海に近寄る。

「だから、よく波打ち際とか、こういうあさめのところにいるんです…あっ」

瑠衣の持っていたビーチボールが風にさらわれ、海に流れていく。

「俺が取りに行くから、待っててよ」

「はい…すみません。」

俺はビーチボール目指して泳いでいった。

ビーチボールをつかんだとき、後ろから「あっ」と声が聞こえた。

「瑠衣?」

その瞬間、俺は固まった。

瑠衣はいなかった。

離岸流、かな、ふふ。

と、 誰かの声が聞こえた。


そう、幸せな日常なんて、そう続くハズがないのだ。

やつの、あいつの…

黒野澄香の書いたシナリオ通りに動くしかないのだ。