時空連鎖のクロノス


「何っ!?」

先生は銃を構えて扉に目をやる。

笑い声が聞こえる。この声は、この姿は

俺の足になにかが倒れ込んできた。暖かい。暖かい液体がズボンに染み込む。

俺は動けないでいた。

嫌な、予感が…

「唯鹿、やっと追いついた」


雪、だ。

「冠堵、さん?」

「ふふっ、せんせも一緒だったんですか?」

雪の片手には血まみれの斧、そして、もう片方に持っていたものを投げ捨てた。




「良樹っ!!」



良樹はまだ死んではいないようで、かすかに息をしている。 血も出てはいなかった。

てか、雪力持ちだな。と思ってしまった。


そこでふと考える。

血まみれの斧。

出血していない、良樹。

じゃぁ、誰の血だ?

だれかが俺に囁く。

あたりを急いで見回す。

銃を構えている先生、にやりと俺を見る黒野澄香。

俺は自分の手を見る。真っ赤だ。

そういえば、さっきまで暖かかった足は、冷たい。

ただのかたい固まりが……

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?!!?!?」

俺は勢いよく立ち、かけだした。

足のうえにいた物体が落ちる。顔が見える。

雪が俺の目の前にいる。

「唯鹿、唯鹿は私のこと要らないなんて思わないよね?だって私はみんなの為にいろいろ…」

雪が何を言っているかわからない。

ただ、あたまがぼーっとして、右腕が痛かった。

「筒路くんっ!」

先生が俺に声をかける。

「…だから」

雪はにたぁーと笑う。

「唯鹿は私の為に死んでくれるよね?」

雪の斧が、弧を描く。


「退屈だなぁ…」


と呟きが聞こえた気がした。