俺が村長の家についたとき、二人は話し合いをしていたみたいだ。

「っ!?筒路くん?どうしたの?」


「先生!村長!じつは…」


きいてもらいたいことがあるんだ。

いままでのこと、これからのこと…

それらは、ある言葉でかき消された。

「彼が犯人だよ」


黒野、澄香…

「筒路くんが…?」

「いや。犯人ではなく原因、かな?」

先生は素早く銃を構える。

「待て。まずは唯鹿の言をきこうではないか」

村長が言う。助かった。

でも、いつもと何か違う……

「じつは…」

俺は今までのことを話した。

そして、先生に鍵を渡した。

「…そう、阿万寿さんが…」

「あなたは…自分に全てを話してと、なんとかすると…言いました」

俺は先生を見つめる。

「ん?」

「どう…すればいいんですか…?みんなを、助けるには…」

先生は気まずそうな顔をする。

「それは無理」

黒野澄香があっさりと言う。

無理?

「クロノ」

村長が厳しい声音で言う。

黒野澄香は気まずそうにテヘッと笑う。

無、理


「筒路くん、人の運命は決まってるの。それに、無理矢理にでも過去を変えてしまうと…大変なことになる。」

無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理……

「筒路くんっ!?」

「唯鹿っ」

先生と村長の声が聞こえる。

目の前の黒野澄香か目を見開いた。

「キミ、どうして…」

「っ!!やめなさいっ!!」

パンっと乾いた音がした。

俺の右腕に痛みが走る。

「…え?」

「…泣いているのかな」



「…あ」


目の前の黒野澄香。

俺がさっきまで殴り続けていた相手。

「泣いている人間に殴られたのは初めてだよ」

黒野澄香は顔に付いた俺の血を舐めた。

「…タイムオーバーさ。間に合わなかったようだね」

次の瞬間、扉が飛んだ。