先生が行った後、郁奈はすぐに帰ると言った。
「ぁ。郁奈、ちょっと待ってくれ」
「…?」
「鍵、返してくれないか?」
「っ!?」
郁奈は腕で自身の体を包むような仕草をした。
なんて言えばわからない。全てを話しても信じてはくれないだろうし。
「俺を、信じてほしい。鍵、返してくれ。それから…過去改変はしないでくれ」
郁奈は口をぱくぱくとさせた。
「っ…ぁ…」
「信じて、くれ…」
「なにを…」
郁奈がやっと声を出す。
「なにを、信じるの…?」
「…両親を生き返らせなくても、俺が代わりに守るから…だから……いや」
「…」
俺は本当の事を言う。
「…みんなを、死なせたくはない。郁奈が鍵をくれたら、みんなを…救えるかもしれないんだ」
その言葉で郁奈の表情が一気に変わった。
「みんな…死…?それじゃ、わたし…」
郁奈はゆっくりとポケットから鍵を出した。
「…頼み、ました」
「…あぁ」
俺は鍵を受け取り、村長のもとへと走った。
郁奈が物わかりのいい人間で助かったな、と思いながら。

