何故神社なのかはわからない。

だけど、あそこなら、あの、場所なら、なんとかしてくれると思ったんだ。


いつか時計を拾ったときのように。


「やっぱり、ここに来たんだね」

そこには、黒野澄香がいた。

「だけど残念。ここはあなたを、あなたたちを受け入れなかった」

「なっ……」


「黒野澄香…やっぱりあなたが関係していたのね」

後ろから先生の声が聞こえる。いつもとは違う、声 。

「先生っ!?」

おれは慌てて振り返る。

良樹も構える。

「…そんなに怒らないでくれるかなぁ」

黒野澄香はにへらと笑う。わからない。黒野澄香の表情が。確かな笑っているはずなのに。

「何のつもりかしら?」

「別に何にもないさ。そんな怖い顔をしないでくれよ。…退屈だったんだよ」


黒野澄香は急に笑みを消した。

「…ずっと祠にいたんだ。退屈にならないわけがないだろう?」


ずっと祠に?いや、それよりも

「ふざけるなっ!」

おれは思わず叫んでいた。


「黒野澄香、あんたの勝手な…勝手な理由でそんな…みんな、が…何回死んだとっ…!」

「…この世界、この時間軸ではまだ一回さ」

黒野澄香は懐から懐中時計を取り出す。

「こわれたんじゃ…」

「壊れる?まさか。そんなことあるわけないじゃないか。物理的に破壊してないからね」

あの時計があれば、あの……


先生は素早く黒野澄香に近寄ると、黒野澄香の手にあった懐中時計を奪った。

黒野澄香はにやりと笑う。

先生がさけんだ

「私はきっとあなたの、あなたたちの力になるから、だから…」


「…戻ったら、私に全て話してね」



懐中時計が投げられる。







時計が、動き出す。