図書室で本をよんでいたら、携帯が震えだした。

『逃げて』

たった一言、雪からだった。

俺はとっさに顔をあげると、真、良樹、郁奈、瑠衣と目があった。

図書室のドアが開く。

俺たちはいっせいに駆け出す。

ここにはまだ他の生徒もいるから安心のはずだ。

「筒路くん、職員室に…」

俺たちは先生の横を通り過ぎる。

「なっ」

急いで階段を駆け下りる。

「瑠衣っ!」

「校倉っ!?」

ドンっ、という鈍い音の連続。

横には頭から血を流している真とその腕にいる瑠衣。

「お兄、ちゃん?」

階段の上段には先生が立っていた。

「お兄ちゃんっ!」

「っ!行くぞ!早くっ!」

良樹が叫ぶ。

「真…ごめんっ」

俺は瑠衣を抱えて、良樹と共に階段を駆け下りる。

校門を出て、後ろを振り向く。だれもいない。

「あの…大丈夫です。わたし、自分で走ります」

瑠衣が言った。

正直体力がない俺にはもうキツかった。

「ん。あぁ、気をつけて」

「っ!おい!はやく来いっ!」

良樹が叫ぶ。

また走る、のか…


途中の道路で、車が飛び出してきた。

その車は、華麗な動きで瑠衣を轢いた。

なにが起こったのかわからなかった。

俺も良樹も足を止める。

車は猛スピードで逃げていく。

ただの轢き逃げじゃないことは確かだ。

俺と良樹は顔を見合わせてから全速力で走り出す。

…神社へと。