俺はやっぱり教室にいた。

「唯鹿、谷田部さんに挨拶挨拶っ!」

「…ん?」

見ると、雪の隣に郁奈がいる。

郁奈はこちらをチラチラ見ている。

「唯鹿、怖がられてるよ」

真がクスクス笑いながら言う。

ここでは、真とは仲良しみたいだ。


「…あ。筒路唯鹿です。よろしく」

「谷田部、郁奈です」


やっぱり、谷田部か…

「あの、さ…誰と住んでんの?家」

「家族、ですけど…?」

「家族って、親戚とか?」

「唯鹿…プライベートな質問は…」

アマネが苦笑混じりに言う。

「どうしたんだ?」

良樹がこちらを向く。

「両親と、です」

「…あ。あぁ、そうか。すまない、変なこと聞いて…」

「大丈夫、です…」

ちょうどそのとき、タイミング良く先生が入ってきた。

「ハーイ!みんなぁっ!今日も転校生を紹介しちゃいまーすっ!!」


「男子っ!?」

雪が元気よく反応する。

「男子かと思った?残念、女子でした!」

「先生っ…」

先生はビシィッと扉に手を向ける。

「さぁ、入ってちょうだいっ!!…先生の遠縁よっ!」

シャァーと静かに音が鳴って、細い人が入ってきた。

周りは一斉に息をのむ。

俺も息をのんだ。みんなとは違う意味で。

細いからだ。長く艶のあるさらさらストレートな黒髪。
黒く強い光を放つ瞳。
小さく赤い口。
白く透明感のある陶磁器のような肌。



――――祠の少女…

不意に少女が口を開く。

「黒野澄香だ。よろしく」

凜とした声だった。