神社に着いたときにはもうすっかり日が暮れていた。
「鈴…鈴…あった!」
「鈴が、どうしたの?」
「先生…」
「まさか、決まりを破るの?祠の中に入るの?」
先生は下げていた腕をゆっくりと上げ、まっすぐに俺に向ける。
手にしているものが何かわかった瞬間肌が粟立つ。
「せん……」
轟音と共に俺の右側で何かがはじける。
鈴、だ。
「ねぇ、祠の中に入るの?」
息が苦しい。
多分、祠の中に入ろうとしたら迷わずに撃たれるだろう。
「きゃぁぁぁあっ!先生っ!?」
雪の悲鳴が聞こえる。
「先生、何やってんだよっ!?」
良樹もいる。
どうして、みんな服に血が付いているのだろうか。
…アマネがきた瞬間理解した。
その血は、真のものだ。
アマネは真を引きずっている。
先生はそちらをチラリと一瞥し、撃った。
立て続けに三発。
その瞬間に俺は祠に入る。
当たったかなんて確かめない。どうせ皆死んでいる。
扉を開けたときに先生が撃った。
だが不思議なことに俺には当たっていない。
後ろで誰かが倒れる音がした。
大きな祠だが、すぐに奥にたどり着く。
暗闇の中先生がまた撃った。
俺の近くの木がはじける。
耳が痛い。 キンキンする。
「っあ…」
奥の壁にだれかが吊されていた。
「よく来てくれたな。ご苦労だった」
途端、祠の中が明るくなる。
先生は後ろにいたが、撃ってこない。
吊されていたのは少女だった。
長く艶のあるさらさらストレートな黒髪。
細く華奢なからだ。
色白く透明感のある磁器みたいな肌。
黒い双方が開かれ、閉じていた赤い口が開く。
俺は息をのむ。
「早く、返したまえよ」
「はい?」
「時計だよ、時計」
俺はポケットから時計を取り出した。
パンッ
次の瞬間、床に倒れていた。
背中と胸が痛い。
息ができない。
胸を押さえると、てが濡れる。
鉄のにおいにむせる。
パンッ
もう一度軽い音がして、俺の手に衝撃が来る。
時計が撃たれた。
何回目だよ、これ。