一瞬教室がざわめく。

郁奈は困ったような驚いたような表情をして先生を見つめる。

先生は気がつかない。

「郁奈…」

「え?」

郁奈が俺を見る。

「阿万寿、郁奈…」

「わ、私は谷田部郁奈です。阿万寿さんは以前ここに住んでいた私の親戚、です。」

以前?

「な、んで…だって、郁奈は」

「それ以上は言っちゃ駄目!」

「え?」

突然声が聞こえた。

それも、頭の中に直接響くような感じで。


先生がじっと見ている。

「…あ。なんか俺、寝ぼけてた、みたいです。」


みんなは苦笑していた。

そこで俺はあることに気がついた。

ポケットの重みがない。

… 時計がない。


「あ。すみません。俺、用事が…」

俺は席を立ち、神社へとかけていく。


「あっ、こらぁっ!学校よ!授業中よっ!?…もぅ…」