教室には俺を含め五人がいる。

また、戻ったのか。

ふぅ、と息を吐き教室内を覗く。


何か違和感に気づく。

先生がまだいない。

いや、それよりも…

「どうしたの?唯鹿?」

雪が話しかけてくる。

「唯鹿?」

そいつは、雪の後にいて、俺に呼びかける。

「…お前、だれだ?」

「誰って?」

「唯鹿、頭でも打ったのか?」

「嫌な冗談だなぁ…」

雪、良樹、誰かの順で言う。

「俺は知らない。会ったことも話したこともない。誰だ?」

「え。何言ってんだ、お前…」

「その冗談、笑えないんだけど」


険悪ムードが流れる。

「…アマネ」

ぼそりとそいつが言う。

「天音 修哉だよ。思い出した?唯鹿」

……アマネ

知らない。聞いたこともない。

「俺達…知り合いだったのか…?」

「何、言ってんの、唯鹿。私達四人は幼なじみじゃない」

四人?

いや、待て。

真は?

それよりも、教室には五人しかいない。
郁奈は…?


「はぁ?校倉ぁっっ?あんなのはめがね系男子への冒涜よっ!」

「…校倉くんは、ね…」

「っつかどうして唯鹿は校倉のこと名前呼びなんだよ?」

どういうことだ?

「か、郁奈はっ!?」
「かなぁ?…私が最近までやってたエロゲーのメインヒロイン?」

いや、違いますケド。というか雪さん、そんなものやっていらっしゃるんですカ。 堂々と言うんですね。流石雪、俺たちにできないことをやってのける。そこに痺れる、憧れ……

「かな…?聞かない名前だな」

「かな、ちゃん…だっけ?唯鹿の架空の人物とか…?」


本当に知らないのか…

訳が分からない。


「はいっ!みんなぁっ、今日は真面目に見えるように席ついてっ!!」

先生が勢いよく入ってきた。

「転校生よっ!!入って!」

先生と俺たち五人の視線の先で扉が開く。俺は驚いて目を見開く。

郁、奈………







「東京から来ました。谷田部 郁奈です」