神社まで、俺たちは無言で過ごした。

喋ってはいけない、声を出してはいけない、そんな気がした。

「筒路くんはさ、やり直したいこととか、ある?」

「俺、は…」

「私はあるよ。お父さんとお母さんを生き返らせたい」

郁奈はまじめな顔になった。

「祠のなかには、何があるんだろうね?」

「…わからない」

「決まりの4つめ、過去改変はしてはいけない。それって、過去改変する方法があるってことよね?」

「郁奈?」

「観測者に見つかってはいけない」

鍵、と囁く。

「鍵、取れれば成功だったのに」

あぁ、そうか。郁奈が鍵探しを手伝ったのも、毎回鍵が見つからなかったのも、郁奈がとっていたのか。


…祠を見つめていた意味も理解した。

「じゃあね」

郁奈は祠に向かってあるきだし、祠の扉を開けた。


「か……」

「唯鹿ぁっっ!」

誰かが泣きながら俺を呼ぶ。

「雪?」

「し、真と良樹、が……ししっ死んっ」

「っ!?どうしてだっ!?」

「真、は…打ち上げ花火の近くにいて、花火が不発弾で…爆発、して……」


「良樹はっ!?」

「通り魔に、刺されて…それ、で……」

雪は何かに気づいたように顔を上げる。

「郁奈ちゃん、は…?郁奈ちゃんが危ないのっ!」

「どういうことだ?」

「観測者のしょうたいが」

急に雪の頭が飛んだ。

後ろからだ。

俺は振り向けないでいた。

「全く…阿万寿 郁奈は時を飛んじゃったし、冠堵 雪は正体をしっちゃった。頭のいい飯田良樹はすでに気がついていた。校倉真は忠告に従わない」

冷や汗が流れでる。

「筒路唯鹿。キミはこれで何度目だ?」

はやく、終われ!!

あと少しだったのに…

あと少しで、皆生き残って…

目の前に倒れている雪に目がいく。

ポケットの中の時計が動き出す。

かすかな振動がわかる。

針の音が心地いい。

発砲音。