「妄想世界なんかには、浸って無いわよ」
花香は前菜を口に含みながら、肩を上下して笑っていた。
「旦那、早く帰って来るといいわね」
「えっ?あぁ、うん。
まだ旦那では無いけどね………。」
「何してんのよ、お宅の旦那は」
花香はお皿を積み上げていくと、ナプキンで口を拭いた。
「なんか、心臓かなんかの手術が上手い人……
式部ShiKibu先生だか、なんだか………」
花香は腕を組んで、携帯を取り出す。
私は残っていたティラミスを口に入れた。
ちょっと苦さがあるけれど、それがまた美味しい。
「式部…明子Akikoのことでしょう?」
私はフォークを置いて、花香から携帯を奪う。
「ちょっと、私の…」
「式部明子?
天才女心臓外科医……」
彼が追いかけて行ったのは、女。
ちょっと見てくる相手は、女。
「ナニソレ、信じられないんだけど!!」

