私の母、志乃さんは幸せそうだった。
父の忠仁さんもそう。
二人とも、幸せそうだった。
『詩織には、謝らないとな。
教会施設に預けてしまったこと…』
『本当にごめんなさい。
私の……力不足で、あなたを、詩織を、まみやの人間だって、認めて貰えなかった。
私の家の、柿園にも、認めて貰えなかった』
今、慧と私、同じこと思ってる。
お母さんは言ったよね?
今確かに“まみや”って。
『あなたは、正真正銘の間宮詩織よ。
お願い、それだけは忘れないで。』
私の本当の名。
柿園の養女となる前の名字なんて、覚えてなかった。
広志さんが言ったように、柿園の人間だと思い込むためじゃない。
ただ純粋に、忘れてしまっていた。
本当に、私は
“間宮詩織”なの?
忠仁さんが書いたんだろうか、書き初めようの半紙に大きく書いてある。
『間宮詩織』
私は、本当に運命の人に出逢ったんだ。