『詩織、分かる?
あなたのお母さんと、右がお父さんよ』
『自分でお母さんって言うなよ、
俺の左にいるのが、詩織のは母親…
志乃Shinoさんだ。』
『志乃さん、だって。
忠仁Tadahitoさん可笑しいよ?』
記憶が少しずつ戻ってくた。
暖かい親の温もりと共に、無理やりどこかに
閉まった想いを引き出して。
『人は、いつ、どうなるか、
分かっているもんじゃないわ』
『だから、詩織を教会に預けた今日、
まるで遺言みたいで悪いケド、
詩織が幸せになるこの日のために、
俺らから、簡単ながら、言葉を贈ります。』
私の頬に涙が一つ零れてくる。
慧は私の肩を静かに抱き寄せた。
『今詩織の横には、忠仁さんに負けないくらいの、格好いい人がいるのね。』
『俺らは、詩織を幸せに出来なかった…
だから、キミが、
俺ら以上に詩織を…幸せにしてやってくれ』
『きっと忠仁さんは、生きてても、
詩織とあなたには、このビデオを見せて
いたんだと思うわ。
あなたが、詩織を嫁に欲しいという、
大切で、幸せなこの時に。』