広志さんはそういうと、床に手をついて、
慧に頭を下げた。
「えっ、あの、ちょっと…」
珍しく慧が戸惑ってる。
貴重過ぎて、頬が緩みそうだったケド、
広志さんのいきなりの行動に、
そんな笑っていられる余裕はない。
私は広志さんの側に行き、肩を抱いた。
「広志さん、止めてください!
…しかも、玄関で…………」
「詩織、詩織は、自分の両親のことを
ちゃんと覚えているか?」
“ちゃんと”
その言葉が、嫌に引っ掛かった。
「私、の両親は、広志さんとひかりさんです」
「詩織は本当にいい子だ。
そうやって、僕らを親だと思うようにしてたんだね。
そうやって、忘れようとした。
でもな、詩織。
姉さん達は、僕らよりも、詩織を愛してた。
今も、空の上で
詩織の幸せを願ってるんだよ。
その証拠を、証を、
詩織…慧くんと二人っきりで見るんだ。」
証?
二人っきりで?
私は、慧と何を見ればいいの?
「ひかり、準備は出来てるんだ。
案内してやってくれ」
「分かったわ。
…詩織ちゃん、間宮さん、こっちよ」
ひかりさんはそう言うと、階段を上がった。

