慧は笑ってた。
そんな話をすると、他の人はみんな同情顔を浮かべるのに、慧は笑っていた。
驚いた。
そんな人は、慧が初めてだったから。
今思えば、慧の家庭環境も普通では無かったからだろうケド。
でもその時直感で思った。
この人は“同情”なんてしない。って。
「詩織…平気か?」
慧は、私の喜怒哀楽を理解して、真似してくる。
だけどその真似は、上辺だけのものじゃない。
私よりも倍に、真似をする。
『キミの苦しみ、僕には理解できる』
って言う薄っぺらい言葉では片付けられないほど。
「大丈夫、緊張してるだけだから」
「俺も緊張してる…触ってみ」
ふいに掴まれた右手は、慧の心臓に。
―……ドクッ、ドクッ…―
スーツの上からでも感じられる、大きな鼓動。
―……トクッ、トクッ…―
全身に走る私の鼓動よりも、倍にドクドクしている。
「詩織…」
「ん?」
右手と慧の左手は、恋人繋ぎとなり、慧は足を止めた。
「俺が必要か?」

